21世紀の東京女学館をめざして
TOKYO JOGAKKAN

東京女学館は明治21(1888)年,「日本婦人のもつ潜在的な可能性を開放し,世界の女性と対等に交際できる人材を育成したい」という当時の指導者たちの願望をもとに創立された。以来110余年,良質の教育を行い,私立の女子教育機関としてすぐれた評価を確立してきた。しかし「世界の女性との対等な交際」という創立者達の目標は実現されないままで今日に至っている。その理由は日本では,女性が常に男性の補助者という立場を強いられ,みずからの自己実現を達成する機会を奪われ続けてきた事による。
戦後の日本は人権の重視を念頭に置いて再建され,新憲法によって男女の平等が保証されることとなった。しかしまもなく発足した経済の再建と高度成長に向かっての国民的努力が,主として男性によって計画・実行されたため,女性はふたたび補助的な役割を押しつけられ,みずからの志望の実現を阻まれてきた。
ところが最近になって顕在化した社会と経済の変化は,経済活動の国際化とあいまって,女性に対して,国内および海外でより積極的な役割を担う道を開くこととなった。こうした歴史的変化に際し,東京女学館は小学校から大学に至る総合的な教育計画を立案・実現し,21世紀の世界における女性の活動を支援し,今度こそ創立者達の願望に応えたいと考えている。

1.グローバル化と日本のアイデンティティー

日本の女性が国際社会で積極的に活動するためには,世界のなかで日本がおかれた立場や増大する経済力とそれに伴う責任などを認識し,かつ千年を越える歳月をかけて熟成してきたその文化が21世紀の人類の発展にどのように貢献できるかを知らなければならない。また国際化の進展のなかで,他国の文化や人々に対する理解と共感を持つ事も必要である。東京女学館は日本の伝統文化の本質とその変容の実体を把握し,それを世界に向かって発信すると共に,他国の文化の価値をも理解する力を養う教育プログラムを展開したい。

2.女性の役割

「21世紀は女性の時代」と言われるが,それが実際に意味するところはまだ判然としていない。各国がそれぞれの社会的伝統の中で女性の役割を考え,定義づけようとしているのが現状である。しかし国際化の急速な進展の中で,女性がより大きな役割と責任を担うようになることには疑いの余地がない。東京女学館は女性の能力開発に関する研究を進め,義務教育に始まって高等教育までを包括する総合的で,かつ革新的な教育活動を進める事により次世代の女性の自己実現を支援したい。

3.リーダーシップ

リーダーとしての女性の潜在的な能力は,戦後の経済成長が達成された後でさえも,数々の経済的,政治的,社会的な制約の中で本来の開花を阻まれてきた。現在の日本の繁栄の実現には,人口の半分を占める女性が不可欠の役割を果たしてきたのにもかかわらず,国や社会の意志決定の過程に十分な参加を求められてきたとは言い難い。東京女学館は女性のリーダーシップの育成をその最大の使命とし,リーダーとしての能力の開発と女性の地位強化のため最先端に立って努力を進めたい。一貫教育の実現に加え,教室外でも多彩な活動を展開し,海外研修やインターンシップ,実社会における各種の活動への参加等を通して目標の実現を促進したい。

4.バイリンガルな人材の育成

 世界という舞台に積極的に関わろうとする女性にとって英語の能力は不可欠である。周知の通り明治以来日本の英語教育は多くの欠陥を抱えてきた。東京女学館は最先端の教育技術を駆使したカリキュラムを導入するとともに,国内での一貫教育に加えて,海外での研修計画を充実し,さらに現地の著名な女子校での学期または年間の留学・研修を推進したい。また海外での公的機関または非営利事業等でのインターンシップを通して,現職の女性リーダーと接触し,活動を共にすることにより「世界の女性と対等に交際できる日本婦人を」という創立者達の願いを実現したい。

5.女性のための新しい未来を

 明治以来,日本人は多大な労働と大きな犠牲を払って近代化と国力の拡大に努力してきた。しかしその反面で,女性から人間としての権利と正当な機会を奪って来たと言う事実を無視し続けてきた。そのことは女性の人生を大きく制約しただけでなく,社会全体に大きな害悪をもたらしてきた。東京女学館は女性の人生が長期にわたって阻害されてきたことの原因とその結果を見極め,性別による差別を克服し,女性と男性がすべての面で対等のパートナーであるような社会をつくるという本来の使命を果たすために最善の努力を尽くしたい。

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